after, my street fashion #01 #02
音楽を着て、音楽と歩く。
2021-03-06
「音楽を応援するために購入されたTシャツが、ストリートでどう着られているか知りたい」——これが、本記事のテーマです。
2019年の末から世界中に広まった新型コロナウイルスは、世界の風景を変えてしまいました。街からは人が少なくなり、出歩く際にはマスクが欠かせなくなりました。人が密集するイベントは軒並み中止。日々報道をチェックしては、新規感染者の増減に気を揉むようになりました。それから、あとは何が変わったでしょうか?
たぶん私たちは、以前よりももっと意識的に、何かを「応援」するようになりました。
コロナ禍対策による様々な制限は、言わずもがな経済活動への打撃となりました。ライブハウス/アーティストは苦境から脱するためにオンラインでのライブ配信やクラウドファンディングを行うようになり、その中の試みとしてグッズのTシャツを販売するようになりました。とくに2020年は、それらの商品を購入した音楽ファンの方も多かったはず。
ここでひとつ、ある疑問が——。そうやって持ち主の元へと渡ったTシャツは、どんな風にストリートで着られているのでしょうか?
それを知るべく、音楽が大好きな友人2人に協力をお願いしました。1人目は、久保田翔さん。(以下、普段の呼び方通りに「くぼしょーさん」と表記)
くぼしょーさんは自身の音楽レーベル運営をしながら『YOU SAID SOMETHING』『KALMA』『plums』『mel』といった北海道の注目バンドのプロモーション活動を行なっている人物です。「自宅から徒歩20秒」という〈中島公園〉を一緒に歩きながら撮影をしました。
そして2人目は、現在学生の細野暁夢(あきむ)さん。暁夢さんが“自分のストリート”として選んでくれたのは、自身にとって大切な2つの場所——アルバイト先のレストラン&バー『BUDDY BUDDY(バディバディ)』と、札幌におけるミックスカルチャー(音楽+アート+食+お酒+and more!!!!!!)の発信源になっているスペース『PROVO(プロボ)』を結ぶ〈創成川通り〉です。
それでは「音楽を着て、音楽と歩く」2人の姿と言葉をお楽しみください。
#01 / 久保田翔さん と歩く〈中島公園〉
『みなみ』は“良い青春”です。
-本日はありがとうございます。まずは自己紹介からお願いします。
くぼしょーさん:久保田翔です。フリーランスで音楽の宣伝をしつつ、Mash Apple Recordというレーベルをやっています。具体的に言うと、プロモーター業という音楽を世に広める役割になるのかな。
”広める”と言っても、まず音楽があってそれをテレビ局とかラジオ局に持ち込んで、そこから拡散してもらってエンドユーザーの耳に届ける、それがプロモーションの流れになります。その梯子の役割をしています。
ー音楽にとても近いお仕事をされているんですね。
くぼしょーさん:はい、二つの意味で音楽に生かされています。
―今日は「くぼしょーさんにとってのストリートで撮影をしたいです」というお願いをしたんですけれども、なぜ中島公園だったんでしょうか?
くぼしょーさん:中島公園は、多い時は週に14回くらい訪れるんです。というのも、家から徒歩20秒、本気を出せば10秒(笑) 散歩をしたり、サッカーをしたり、生活の一部になっているのが中島公園なんです。素晴らしい景観があるので、考えに詰まった時とか、癒されたい時には中島公園に行きます。家の次に居る場所、っていう感じです。
―最近、歩く時はどんな音楽を聴いていますか?
くぼしょーさん:”最近”となると、クラシックを聴いております。クラシックってあらゆるものの原点であり頂点だなっていうのを感じるんです。小学校の授業とかでも触れている音楽なので、何を聴いても「あ、聴いたことある」とか「懐かしいな」とか、そういうのを遺伝子レベルで感じられる。聴いていて、今いちばんリラックスできるのがクラシックです。
まぁ聴いているクラシックは「クラシック有名曲」というプレイリストで、所謂ミーハーなものですけどね(笑)
それか、北海道・苫小牧のバンド『NOT WONK』です。最近の新曲、素晴らしいので。
―中島公園の景色とも相まって、気分にうまくハマる、という感じですね。
くぼしょーさん:そうですね、今の雪景色ともリンクしますし『NOT WONK』がクリスマスに解禁した〈slow burning〉の“冬っぽいけどアツい”みたいな感覚ともリンクします。
この公園には四季があるので、季節によって合う音楽っていうのも必然的に決まってきます。
―うらやましいです。僕も札幌市民だからこそ、中島公園の四季の良さはすごく分かりますから。
―では、ファッションについてもお聞きしていこうと思うんですが、普段はどのように服を選んでいますか?
くぼしょーさん:僕の中の服の理論に大事なことがひとつあって、それは「着ていて、1ミリでもストレスを感じたらダメ」なんですよ。昔はセットアップとか、シャツのボタンを上までとめて着てたりしたんです。けど、この歳になって服には1ミリもストレスを感じないようなものを選ぶようになりました。
ーなるほど。「ストレスを感じない服」というのを追い求めて、どのような答えに辿り着きましたか?
くぼしょーさん:今日も着ている〈Champion〉のリバースウィーブのパーカーとか、〈YAECA〉のスラックス、〈リーバイス〉のジーパン…靴は〈コンバース〉のジャックパーセルとか〈ニューバランス〉の996とか。
これらはマジで、身につけていて何もストレスを感じない。と、言うことはですよ?「着ていてストレスがゼロ」ってことは身につけているものがゼロということで、ほぼ裸なんですよ!
―(笑)気持ちの面では、全裸だと。
くぼしょーさん:そう今も、裸でインタビューを受けている。ストレスがゼロだから(笑)。このアウターもそうです、なにも僕を縛らない。
―良い服の選び方ですね。
くぼしょーさん:あと、服は長く着られることが大事で、けっこう軍モノとかも選ぶんですよ。軍モノってすごいシンプルで無地が多いんですけど、長く着られて、ずっと愛せる。
―今日のコーディネートにも、かなり軍モノを取り入れていらっしゃいますよね。
くぼしょーさん:これはある意味「国同士が友好関係を築いている」ようなコーデなんですけど。靴下がイギリス軍、Tシャツの下がロシア軍のスリーピングシャツ、アウターはアメリカ軍の通称“モンスターパーカー”というSEKRI社のもの。
…このアウターすごいんですよ、ここに『PCU LEVEL 7』って書いてあるんですが、この数字は寒さに対して戦えるレベルで、レベル7は極寒地で使うアウター。これひとつあれば、北海道の冬もちょろいです! 軍モノは機能性があるし、生活にとって欠かせない”ギア”ですね。
―本日のインタビューの中心であるTシャツにも触れていきたいと思います。いま着ていただいているTシャツは、どんな一枚なんでしょうか?
くぼしょーさん:これは札幌の『みなみ』というバンドのTシャツで、『グミ』っていうバンドのメンバーが少し替わって活動してます。
買ったきっかけは、女満別に『Favorites』というバンドの藤田侑希という人物が住んでいるんですが、札幌の緊急事態宣言が解除されたときに「遊びに行くね」っていう話になったんです。それで〈えぞまつ〉という居酒屋を貸し切って、身内だけで弾き語りライブをしながら飲む流れになりました。そこに、藤田侑希が「『みなみ』のTシャツ欲しい」って言って、みちるくん(『みなみ』のボーカル/ギター)を呼んだんです。
その時に僕も手に入れました。『みなみ』は『グミ』の頃から好きで応援したいし、Tシャツのデザインも良い。みちる君と久しぶりに会えたのも本当嬉しかった。
久しぶりのお酒を交わすのが楽しかったのか、藤田侑希は2曲しか“弾き語らず”にずっと喋ってましたね(笑)
―普段からバンドTシャツは着ますか?
くぼしょーさん:バンドTシャツって、皆さん同じだと思うんですけど、その場のテンションで買うことが多くて基本的に部屋着になる…。
―わかります。ライブ会場を除くと、外では着ない場合が多いですよね。
くぼしょーさん:でも「応援したい」って気持ちだったり、デザインがかっこいいからって理由で買うこともあります。その場合だと外で着て歩きますね。今日着ているこれも、外で着ています。
―すごく雰囲気の良い一枚ですよね。着ているのを見て「いいなあ〜、欲しいなあ〜」と思いました(笑)。
くぼしょーさん:デザインしたのが友達の、いま東京で仕事を頑張っている平野貴大という新進気鋭のデザイナーなんですけど、彼がデザインしたっていうのもポイントが高くて、かつ、なんていうか“山下達郎感”ないですか? 70〜80年代のポップス感…そういう、オールドスクールな感じのデザインがすごくいいなと思って。それで、ちょっと着すぎて、色が剥げてきて。
ーそう! そこがすごいなと思いました。最高の質感ですよ。
くぼしょーさん:コレがいいんすよ! ヴィンテージ加工じゃなくて、自分でヴィンテージにしている、これが大事っすね。
あとこのTシャツは、生地も厚い。バンドTシャツって普通コストを抑えるために薄めの生地で作ることも多いんです。でもこれは生地が厚くて頑丈、何回も洗ってもヨレない。だからずっと長く着られる。
―そんな素晴らしいTシャツを作った『みなみ』の、バンドとしての良さも教えてください。
くぼしょーさん:『みなみ』の魅力は、さかのぼって『グミ』の魅力にもつながるんですけど、僕は20歳から25歳まで東京にいて、札幌に戻ってきて出会ったバンドが『グミ』なんです。
僕は“青春”が好きで、懐かしさでなんとも言えない気持ちになる。その気持ちを蘇らせてくれたのが『グミ』であり、今の『みなみ』にもつながっているんです。ボーカルみちるくんの“声”、メンバーの個性が爆発的な良さを生んでるのかなと思います。誰が鳴らしている音なのかが、表情とともに聴こえるような。
僕が主催するイベント「DOSANCO JAM」に『グミ』でも『みなみ』でも出演いただいたし、音楽に関わってきた人生の中では彼らの影響はでかいです。
―今、くぼしょーさんは青春ですか?
くぼしょーさん:今も青春です。いくつになっても、青春というのは、”つきまとってくる”。
―うんうん。
くぼしょーさん:良い意味でも、悪い意味でも、青春ってどっちの意味でも捉えられる。『みなみ』は良い青春です。
きっと青春っていうのは人生ですね。クラシック聴きながら中島公園を歩くのも青春、なのかな(笑) まぁ聴いているクラシックは「クラシック有名曲」というプレイリストで、所謂ミーハーなものですけどね(笑)
ー青春は何度も作れるんですね。
くぼしょーさん:そうです、すべては自分次第です。
くぼしょーさん:あとプロモーターとしては、いま『KALMA』というバンドのプロモーションもやっています。彼らは二十歳で、成人式を迎えられなかったんですけども、悔しい思いをしながらもできる限り最大の活動をしています。
いつでも元気な彼らにパワーをもらいますし、出来立ての楽曲を聴かせてくれた時、ウルっとくる時があります(笑) そういう、若い子たちの活動をどんどん広めていくのが、大人になった今のミッションなのかな、と。
―大人としての役割もあり、でも、現在進行形の青春も生きているという。
くぼしょーさん:そうです。大人であり、子どもでありたい。
ーさて、まだコロナ禍は過ぎ去っておらず、予断を許さない状況でありますけれども、そんな中でも「服を着て街を歩く」っていうことは生活の中に絶対にあると思います。
今、くぼしょーさんにとって服を着たり、街を歩く楽しさというのは、どのように変化していますか?
くぼしょーさん:そうですね、当たり前の生活ができないからこそ、このような題材でインタビューしていただいたと思うのですが、すばらしい景色が札幌の街にはごろごろあるので、そういうのを見に行ったりしただけで、僕は「外に出てよかったな」って思えるようになりました。
さかのぼること3年ほどなんですけど、僕けっこうな頻度で入院したんですよ。鎖骨折ったりとか扁桃腺の手術をしたり、鎖骨からプレートを抜いたり、看護師さんには非常にお世話になってきたんです。分野は違うけれど看護師さんってコロナ禍ですごく大変じゃないですか。「これ以上僕が看護師さんのお世話になるわけにはいかない!」と強く思っています。
だから、「服を着る」とか「街を歩く」というのも自分のパーソナルな範囲のものに変化しました。医療従事者さんたちに敬意をもって生活をしていきたい。それしかないです。
―ではインタビューの最後に、伝えたいことがあればお願いします。
くぼしょーさん:僕はプロモーターという業種でもあるので、今はイベントができない分、札幌とか北海道のインディーズ音楽のプロモーションを仕掛けていきたいなって思っています。もし、未来を見据えて、バンドが音源を出すという時にはプロモーションに協力させていただきたいので、気軽に連絡いただきたいです。
そして、趣味で『DOSANCO JAM RADIO』というのもやっているので、よかったら聴いてください(笑)
―いいですね、記事の最後にリンク貼ります!
くぼしょーさん:あと僕、フリーランスという立場上、コロナ禍のこの状況だとやや金銭的にも厳しかったので、いろんなライブハウスへの寄付とか、そういうのに協力できなかったんです。つまり、応援がしたくても、できない人もいる。けど応援する気持ちは変わらないので、コロナが終息した暁には、ほんとうの意味での、乾杯をしに行きます!
#02 / 細野暁夢さん と歩く〈創成川通り〉
それを着ている自分のことも、誇りに思える。
―今回はこの企画にご協力いただきまして、ありがとうございます。では、自己紹介からお願いします。
暁夢さん:細野暁夢(あきむ)です。普段は2部大学の3年生で、それ以外に『CRJ』という音楽チャートを作って発信している学生団体で全国の幹部をやらせていただいておりまして、その札幌支部であるCRJ-SAPPOROではFMノースウェーブにて毎週ラジオ番組を放送しています。
それから、『OTO TO TABI(おととたび)』という冬の音楽フェスの運営にも携わっています。
―この企画では、事前に「暁夢さんにとってのストリートで撮影したいです」とお願いしましたが、暁夢さんにとってのストリートは札幌市にある〈創成川通り〉でした。その理由を教えてください。
暁夢さん:創成川通りは札幌駅側にBUDDY BUDDYというお店があって、そしてススキノ側にはPROVOというお店があって、その二つの場所が私にとってすごく大事な場所なんです。どちらも家くらい居るんじゃないか、という場所で、それが〈創成川通り〉という道で一直線につながっている。
わたしは高校を卒業した年からBUDDY BUDDYで働き始めてるし、同じ年にPROVOへ行って、そこから知り合いも増えて人生変わっているんです。10代後半の思い出は、だいたい創成川通りにある気がします。
―普段はどういう基準で自分の服装を選んでいますか?
暁夢さん:服は「今日のわたしはこれ」っていう意思表示ですね。わたしは一本の芯がめちゃくちゃ通っているタイプの人間ではなくて、すぐ気持ちも変わるし、着たい服もいっぱいあるし、すごいこだわりがあるわけではない、何事に対しても(笑)
だからその日の服で「今日はしっかりがんばりたいから、綺麗めの服を着て大人で行くぞ」って自分でも思うし、周りにも「大人ですよ」っていう顔をする(笑)
ーなるほど、確かに暁夢さんは、普段すごく尖った格好をする時もあるし、シンプルでかっちりした服を着る時もありますよね。
暁夢さん:そうです、日によってぜんぜん違いますもん。あ、でもグッズ系のTシャツはどうしても増えちゃいます。
わたしは基本、服にあまりお金をかけないんですよ。高価な服はまだ身の丈に合っていないし、“自分の生活が苦しくならない範囲の服を着る”というのも学生のアティチュードだなと思っていて。
でもバンドのグッズだと、着たいし、値段とか関係なく出してあげなきゃと思う。だからグッズのTシャツは、持っている服のなかで一番お金をかけていると思います。
―それでは、今日のTシャツのことも教えてください。
暁夢さん:これは私がいつもお世話になっているPROVOのチャリティーTシャツで、新型コロナウイルスの感染拡大がしんどかった去年の5月、6月くらいに受注生産の形でPROVOが販売していたものです。デザインも何パターンか種類があって、これはデザイナーのYOSHIROTTENさんがデザインしたTシャツです。
外で誰かと一緒に音楽を聴いたりだとか、そういう場に行く機会がマジで無かった時期なので、この「RAW POWER」(※RAW=「生」)っていう文言がめちゃくちゃ良い! と思って買いました。しかも、新型コロナウイルスが流行る前、最後にPROVOで遊んだパーティーが、YOSHIROTTENさんが東京からいらしているパーティーだったんです。そういう経緯もあって買いました。
―もともと暁夢さんは、街にグッズのTシャツを着て行く頻度って、どれくらいでしたか?
暁夢さん:好きなアーティストのTシャツだとしても、私服として着た時にかっこいいものしか買わないので、着る頻度は多いと思います。コロナ禍前の毎日バイトに行っていた頃は、週2くらいは必ず何かしらのアーティストTシャツを着ていたと思います。
―今回のPROVOのTシャツでいうと、2020年を通して、どういうシーンで着ることが多かったですか?
暁夢さん:やっぱり「RAW POWERを感じる時」ですね。
―「RAW POWER」、「生の力」みたいな感じでしょうか。
暁夢さん:そう、それこそイベントとかに行く時が多かったです。いつもはこのTシャツ、部屋に飾ってあるんですよ(笑) 白だから、あまり汚したくない。だから「ここぞ」の時に着ようと思ってます。
最初に着たのは、『SOL(ソル)』というPROVOが夏に『札幌芸術の森』で開催したイベントの時でした。その時はPROVOのチャリティーTシャツを着ている人がいっぱいいて、THA BLUE HERBのBOSSもこのTシャツを着てて、「おそろいだ!」って思ったりして。
あと、コロナ禍がまだギリギリ落ち着いていた時期に、一回東京に遠征に行ったんですけど、その時も東京のクラブに着て行きました。出演していたのは東京のアーティストさんなんですけど、札幌に来た時はいつもPROVOに来てくれる方だったので「それ(Tシャツ)PROVOのじゃん」って言ってくれて。
―気づいてくれたんだ。
暁夢さん:お話もできて、嬉しかったです。
―そういうエピソードっていいよね。「めっちゃ”ストリート”じゃん!」って思う。着ているもので自分の意思表示ができたり、着ているだけでどこに属しているかが伝わったりするのがストリート・ファッションだと思うので。
暁夢さん:ほんと、そうなんです。その人がその服を選んでいる意味とかストーリーがないとな、ってめちゃくちゃ思います。
―それこそ、そのTシャツは背中にPROVOのロゴが入っていますよね。
暁夢さん:背負ってるから、気合入ります(笑) この服で東京のクラブ行った時も「札幌のストリート連れて来てっから!」みたいな気持ちで(笑)
―今日のコーディネート全体で言うと、Tシャツに合わせてどんなことを考えて決めましたか?
暁夢さん:PROVOのTシャツなので「PROVOへ行くなら」っていう気持ちかもしれません。わりと楽さ重視で、このダウンも一枚で暖かいし、もっと本気でPROVO行くならカバンも持たないでダウンのポケットに小物全部入れて、踊れるように靴もぺたんこのやつにします(笑)
―今日のマスクのことも聞かせてください。絶対に意味があるマスクだと思うけど、それはどんなマスクなんですか?
暁夢さん:これは80KIDZというアーティストさんのグッズです。わたしは高校時代に80KIDZを好きになって、東京のライブに遠征したりしていたんですが、はじめて札幌で見た場所がPROVOだったんです。
わたしはまだ10代だったし、親も80KIDZ見たいからということで家族で行って、その時は80KIDZのTシャツを着て行きました。そしたらカウンターでタクローさん(PROVOのバーテンダー/DJ OSSO)が「それ、エイティーのTシャツだよね」って話しかけてくれて、そこから一気にタクローさんと仲良くなって、PROVOに通うようになったんです。
―その会話があって、受け入れてくれた、という感じだったんですね。
暁夢さん:今思うと、Tシャツいじってくれたのがきっかけだったと思います(笑) 「そのTシャツ、〇〇だよね」って、音楽好き同士の、会話のフックじゃないですか。
―ほんとうに、暁夢さんにとってPROVOは大事な場所なんですね。それも家族で通うような。
暁夢さん:いま、大学で卒論書かなきゃいけないから、主題をPROVOでやらせてもらってるんです。「サードプレイス(※家、学校、職場以外の、第三の居場所)」っていう概念について扱うんですけど、先生に「あなたにとってのサードプレイスはどこなの?」って訊かれてPROVOの話をしたら、「じゃあそこの取材をしてきてよ」って。それでPROVOの常連さんにインタビューをさせてもらったりしています。
家ぐらい楽しい場所ですけど、いまだに背筋が伸びるところもあります。だからこそ通うし、それが自分の底上げにもなるというか…。
しかも、札幌は東京みたいにハコ(会場)が多くない。だからこそ色んなジャンル・色んなものを好きな人がPROVOに集まるのがめちゃくちゃ面白いと思っています。東京では別のところで遊ぶアーティストさんたちも、札幌に遠征で来たら結局みんなPROVOに集まるみたいな事もある。札幌に生まれてよかったなと、PROVO行くと思います。
ほんとに場所って大事で、それが無くなりつつある2020年だったから、ちょっとでも助けになれば、っていうのも勿論Tシャツを買った理由です。単純に、私がTシャツでPROVOを背負いたい、っていうのも大きい理由ですけどね(笑)
―着ている時の気持ちはどんな気持ちですか?
暁夢さん:“背負う”だし、“誇らしい”です。PROVOというお店が札幌にあること自体が誇らしいし、それを着ている自分のことも、誇りに思える。
―〈創成川通り〉を歩いている時は、どんな事を考えますか?
暁夢さん:まずいろんな思い出がよぎります。今はなかなか遊びに行けない時期だからこそ、当時の思い出のヤバさが浮き彫りになるし、今じゃ朝まで飲むとかできないから、そういう事すら凄かったと思うし、楽しかったな、って思います。
それから、PROVOという場所があるからこそ、その下を走らせてもらっているわたしたちの世代は「マジで札幌で何したらいいんだ?」っていうのは常に考えています。歩いている時が、いちばん考え事するかもしれないですね。
―いま2021年の暁夢さんにとっては、好きな服を着て街を歩くことに、どんな楽しさや魅力がありますか?
暁夢さん:そうですね…、今まで「外行きの服を着て、街を歩く」っていうのは毎日のルーティンの中にあった事なんですけど、それが特別なことになってしまった。でも歩いたらやっぱり、スッと馴染む。
街を歩くって、その街に自分を馴染ませていくみたいな感覚があって、だからよく親しんだ街や道を歩いていても、2021年の今だからこそ新しく目に付く事はたくさんあるし、感じることもある。
ほんとうにこの一年で、一個一個の行動、“服を着る”とか“街を歩く”という事にとても自覚的になった気がします。
ーでは最後に、今日一日を終えての感想をお願いします。
暁夢さん:創成川沿いを歩くだけでこんなに思い出あったんだ、って思いましたし、今日でまた思い出が増えました。楽しかったです(笑)
これからも、こうやってどんどん札幌の街に思い出を増やしていきたいなって思います!
〈All Photo by 小畑ちひろ、取材・構成 竹田賢弘〉
お二人の活動について。
久保田翔さんにプローモートをお願いする際の連絡先はこちら→mash.apple.record@gmail.com
久保田翔さんのラジオを聴くにはこちらのリンクをクリック!→『DOSANCO JAM RADIO』
〈編集後記〉
寒い中「Tシャツのコーディネートで来て欲しい」という無茶なお願いに応えてくれたお二人に感謝いたします。なお、この記事のインタビューと撮影は3〜4人の人数で行い、できる限りのウイルス対策をして臨みました。その上で、くぼしょーさんには撮影時だけ「マスクを取りましょう」と編集人からお願いをしています。また、暁夢さんは撮影外の移動では不織布マスクをしてくれるなど、それぞれご自身の判断で気を遣っていただき、当日は頭が下がる思いでした。
寒い中この企画に参加してくれたお二人、素晴らしい写真を撮ってくれた小畑ちひろさん、そして最後まで読んでくださった皆様、本当に有り難うございます。