“つながり”から生まれるものと、“余白”に宿る信頼。
/【インタビュー】Chameleon Label 田中一志さん、下川佳代さん

2022-04-05

音楽や、絵、言葉など、クリエイティブな活動において、先を走って背中を見せてくれる人の存在はすごく重要です。作品を生み出す際の姿勢、社会と渡り合う方法、時間や体力とのせめぎ合いなど、クリエイターが直面する壁は少なくありません。そんな時こそ重要になるのが、背中を見せてくれる人がいるかどうか。今回インタビューをお願いしたChameleon Labelのお2人、田中一志さんと下川佳代さんは、そんな頼りになる背中を見せてくれる方々です。

Chameleon Labelは、札幌を拠点に音楽発信を行うインディーズ・レーベル。田中さんと下川さんはそれぞれ作曲家・編曲家・音楽プロデューサーとして、アーティスト作品のプロデュースや、舞台・映画・アニメ・TV等の楽曲制作に携わられています。

その一方、2021年からはそれぞれご自身の音楽活動を活性化されました。田中さんはソロプロジェクトShizuka Kanata、下川さんはソロプロジェクトtuLaLaとして次々と楽曲をデジタルリリース。12月10日にはモエレ沼公園・ガラスのピラミッドにてSalyuさんや日本の第一線で活躍する弦楽器プレイヤーを招き、札幌のミュージシャンたちと合体した大編成でのライブを成功させました。

中でも今回、特に取り上げたいのは、昨年お2人が発表したアートブック〈Melody in the eyes〉と音楽絵本〈LOMP〉について。〈Melody in the eyes〉はShizuka Kanataと画家モリケンイチさんのコラボ作品、〈LOMP〉はtuLaLaとイラストレーターのシンヤチサトさんから制作がスタートした絵本です。
新型コロナウイルスの影響でクリエイターの周辺も変化を余儀なくされている今。そんな時代であっても、ご自身のクリエイションに力を入れ、歩みを止めない田中さんと下川さんに、ずっと気になっていた事をたくさんお聞きしました。

“ものを作る事を先にする”
っていうのはすごく重要。

ー作曲家・音楽プロデューサーとしての仕事が主であるお二人ですが、この同時期にソロプロジェクトを活性化されたのには、何か理由があったのでしょうか?

田中さん「コロナの影響は大きいですよね。今までは依頼を受けて音楽を作る事が柱で、その合間に自分たちの事(ソロの音楽活動)を少しでもできればいいなというスタンスでやってきました。そういう状態で長年続いてきたのが、新型コロナウイルスの影響で状況が変わり、いままでとは違う自由な時間ができてしまった時、1番やらなきゃならないことは何かな? ———俺たちはやはり音楽を作ること。じゃあこの時期ならばどんな形? ———って考えて進んでいきました。

あとやっぱりいろんな環境の変化、ビジネスがオンラインになったのと同じように音楽も『作ったものを送って、演奏を送り返してもらって、それをまとめて』みたいな形で作れるようになったのも大きいです。こっちも時間あるけど向こうも時間あるから今まで以上にそれぞれがじっくり実験して作れるというメリットがありますね」

下川さん「これは自分の事なんですけど、tuLaLaという形で活動を始めたのが2018年からだったんですよ。自分のアーティストとしての作品を作りたいと思って2018年にファーストアルバムをリリースしました。それから弦楽四重奏とバンドが共演するイベント〈Strings〉を共同主催したり、ROTH BART BARONの三船くんとコラボで音源を発表したのがが2019年。
2020年くらいからコロナになってきたので、そこからパタパタって仕事がなくなって『あれ?これ時間あるじゃん』と思って(笑) お金の面はすごく厳しいのに浮かれているというか、“自由な制作のチャンスでもあるな”と思った。
絵本〈LOMP〉も、かなり前から『やりたいね』って話はしてたんですけど、結局はなかなか進められなかったものが形にできた、というのが2021年でした」

ー以前お話しした際にも田中さんは「今はレーベルや会社の垣根を超えてコラボがしやすくなっている」ということをすごく嬉しそうに話されていましたよね。そういう流れもありつつ、新型コロナウイルスの影響で今までの流れがストップしたりしたと。でも“自分たちの音楽を作ろう”という考えに立ち返った時、ソロプロジェクトの活性化に至った———という感じですね。
Chameleon Labelでソロプロジェクトを同時進行させるというのは、どういう環境なんでしょうか。アイデアを出し合ったり、意見を交わしたりということはあったんでしょうか?

田中さん「音楽に関しては個々に進めていくんですけど、この“本にする”っていうことに関しては2人とも初めてなんで、どこに頼んでどういう風にしてやるか? みたいなことに関しては我々2人だけではなくてシンヤさんもそうだし、モリさんもそうだし、Chimaちゃんもすごく協力してくれました。
最終的に製本は東京の〈篠原紙工〉というところで作ってもらっているんですけど、最初はどこに相談したらいいのか分からなくて」

下川さん「みんなでミーティングしてる時にたまたまChimaちゃんが持ってきた絵本があって、それがすごく理想に近かったんです。『これって、どこが作ってるんだろうね?』って見たら、〈篠原紙工〉って書いてあった。
あ、そうなんだ、って思っていたら、一志さんが『じゃあここに電話してみたらいいんじゃない?』って一同、目からウロコ(笑) それから連絡とって、お話が進んでいった」

田中さん「『これを作るために、いくら必要です』って発想が向こうになくて、『何がやりたいんですか? いくら出せるんですか?』だけだったんです。『その中でやれることを最大限にやりましょう』と。非常にクリエイティブだった」

下川さん「〈篠原紙工〉さんと出会えてなかったら、たぶんどちらもあの形の作品はできてなかったっと思います」

■結果的には、“出すこと”の方が重要だったんじゃないか

ー僕は今日、お2人にすごく聞いてみたかったことがあって来たんです。それは、「これをやりたい」って何かクリエイティブなことを構想して制作するにあたってはけっこう楽しい面やワクワクする面が多いと思うんです。けど一方で、現実面と折り合いをつけるためにはものすごくタスクが膨大になる時ってあると思うんです。クリエイターとして辛い部分というか…。そういう時、Chameleon Labelのお2人はどう乗り越えているんでしょうか?

田中さん「結果的に我々って、全部自分たちでやらないと世の中に出せる形まで持っていけない。と言うか、それをやりたいんです。
2人とも音楽を作る時にビジュアル的なイメージを持ってしまうタイプなので、それを形にしようと思った時には自分がやる方が結果的に良くなると最初から考えてしまう。だから…めちゃくちゃ大変です。だけど、苦痛ではないよね?」

下川さん「うーん、まあ苦痛だと思う(笑)」

田中さん「(笑)」

下川さん「やらなきゃいけない事で溢れるんで、パニくってもうどこから手をつけていいかもわからない…しかも、手をつけたところでそれが上手い方向にいくとは限らないじゃないですか? 煮詰まって、パンク状態ですけど、とりあえず“ひとつずつ潰してく”みたいな(笑) 次に進まないといけないので、『これはここまで、次に進もう』みたいにやるんです。でも、たぶんまた同じ事をやった時には、次はもっといけるぞっていうような形でやろうとは思ってます。極力、考え込んで立ち止まらないように…どんどん次に進むっていうイメージでいるかもしれないです」

ーなるほど、だから止まらないと。

下川さん「前に、ソロアルバムを出そうと思った時に思ったんです。なんでこんなに出せなかったんだろう? 20年も何十年もこのお仕事携わっておきながら…って。それって結局、自分が『ここまで行かないとアルバムは出せないものだ』とかこだわりが強過ぎてしまったからで、結果的には、“出すこと”の方が重要だったんじゃないか、って思うようになったんです。
今は『形になってみんなに聴いてもらってから、また考えればいいじゃん』って思うように変わったんですよ。だから、次に進むっていう事の方を大事にしたいな、って思っています」

ーありがとうございます。僕自身、アイデアがあっても、でもそれを実現しようと思ったら、やっぱり煮詰まる事が多いんです。それも創作面で煮詰まるんじゃなくてお金とか時間…現実との折り合いで煮詰まる。そういう時、お二人はどういうモチベーションで乗りこえてるんだろう? というのはすごく気になっていました。進む、っていうところに意識を向ける、っていうことなんですね。

下川さん「やっぱり難しいですよね。進めないでたまってるものもたくさんありますから(笑) 今回は、たまたま進めたっていうか」

ーあとは、自分で責任を持つ、というところですね。

田中さん「そうですね。我々が今やってることって、途中の段階までやってあとは誰かにおまかせ…っていう事にはできないんです。だから自分の力である程度できたものを見せて、それを気に入ってくれた人が寄ってきてくれて彼らの力を借りて発展させて、さらに自分の意思で次のプロダクトを作ってく、っていうのがここ数年間です。少しずついろんな人が集まってきてくれて、全体のレベルも上がってきているかなと思います。

で、そういうことができるようになった1番最初(のきっかけ)は何だったかと言うと、僕も下川も“自分の作品を出したから”なんです。それまでは、音楽を作る人ではあるけどそういう自分の音楽を作る人だとは思われていなかった。でも作った自分の音楽をはじめて見せた途端、こちらの正体が分かって、それが気に入った人からは連絡が来るし、気に入らない人はもちろん連絡も来ない(笑)、そういう状態になっていく。 だから“ものを作る事を先にする”っていうのはすごく重要。

昔、僕がある人にこんな事を言われた事がありました———その人は自分のアルバムを出して世界的に広まっていて、その人から『田中さん、自分自身の作品はいつ出すの?』みたいな話をされた時に『たくさん作っていけば、そのうち形にできると思うんですけどね』って答えた途端、『それは詭弁だよね』って。何も作ってないのにそんなことを言うのはカッコ悪いよと言われてしまった。かれこれ20年、30年前の話なんだけど、それはずっと引っかかってましたね」

ーそれはやっぱり、ものづくりの現場にいたからこそ直面した厳しさの瞬間ですよね。そういった経験もあって、現在の強さや、折れない芯の部分になっているのかなと聞いていて思いました。

■自分も遊ぶけど、相手も遊んでくれないと

―では、ここからは、それぞれの作品についてお聞きしていくパートに入りたいなと思います。まず田中さんの〈Melody in the eyes〉から聞きたいなと思うんですけど、今日は感想をいっぱい書いてきたので、読んでいいですか? この記事を読んでくれている人向けの感想でもあるのですが。

田中さん「ドキドキするな」

ー(読む)今作は、北海道在住の画家モリケンイチさんと、音楽家Shizuka Kanata(田中一志さんのソロプロジェクト)による、アートブックとしてのコラボレーション。本作には20トラック入りのCDが入っており、モリケンイチさんの絵からインスピレーションを受けた音楽が詰まっています。
12月9日〜11日にかけては、〈モエレ沼公園・ガラスのピラミッド〉にて展示会も実施。実際に足を運び、モリケンイチさんの絵を間近で見て感じたのは、幻想的な異世界でした。それは入ったら戻って来られなくなりそうな…でも踏み入れたくなってしまう…あやしい世界。絵の中には“たくらみ”がたくさん隠されていて、観察すればするほど見る人を楽しませてくれる———そんな思考の遊園地でもありました。
ディストピア的であり、カルト的であり、アバンギャルドで、アイロニーが効いていて、愛や悲しみがある…。
さらにこのアートブックには、「絵を見る」「音楽を聴く」というアプローチの他にもう一つ、「言葉を読む」という魅力まで備わっています。アートブックを制作したモリケンイチさんとShizuka Kanata、お二人の対談が各ページにあり、作品制作の舞台裏を知ることができる。
対談には制作秘話が存分に披露されていて、特にモリケンイチさんの教養とテーマへの深い思考には驚かされるばかり。また、そこにShizuka Kanataがどう音楽的にアプローチしていったかも、読むとハッとさせられます。
不思議な事に、読み終わったあとには「知り尽くした」というよりもむしろ“入り口に立たされた”感じがします。それは言うなれば、迷い込んだら出てこられない門のようなもの。ただし、とても魅力的な。(読み終わる)

左:〈Melody in the eyes〉 右:〈LOMP〉
ーそしてここからまたインタビューに入って行きたいのですが———このアートブックの最初のページにあるように、最初はモリケンイチさんの作品をWEBで見かけてコンタクトをとった…ということでしたが、それはいつぐらいのタイミングだったのかという事と、モリさんの絵をはじめて見た時の印象をお聞かせください。

田中さん「あれは…最初にお話をしたのはいつだっけ? もう単純に紹介してもらって喫茶店に来てもらって、そこで「大好きなんで、曲書かせてください」って話をしたんですけど」

下川さん「あれじゃない? 展示会に私と行った時に紹介して、それで話したんじゃない? 2年ぐらい前なんじゃないのかな」

田中さん「そうそう。僕のなかでこれは突然やろうとしたことじゃなくて、絵とかアート的なものと音楽を一体化させた作品を作りたいっていうのは数十年前から思っていた事なんです。
数十年前なんですけども、東京に住んで音楽の勉強をしていた頃に、PARCOのCMを見たんです。それは映像だけバッと出てきて音楽が流れて、最後に『PARCO』しか出てこない。それを見た時に、あ! これやりたい! って思った。すごく斬新で、自分の音楽は最終的には映像に行き着けばいいなっていう。映画音楽であったりとか…あとは、みんな不思議がるんだけど、コミック・ソングをやりたい。

真面目なものはあんまり作りたくないんです。どっかふざけてて、毒があって…。そういう意味でモリさんの作品にはおバカなものが溢れてる。実はすごくインテリジェンスが高い人なんだけど、決してそれを見せびらかすんではなくて、ものすごくおバカで、色彩もめちゃくちゃポップ———。ここにハマったんです!

洋楽とかのカッコよさっていうのは、高度なことをやってるんだけど、遊び心がしっかりあって、そこが魅力で(耳に)飛び込んでくるみたいなところがある。そういうものを作りたいっていうのは数十年思っていたことなんです。で、モリさんの絵を見た時にほぼ全て成立していた。 だから絵に対して感じたまんま、このおバカ感だとか、ヘンな感じだとか、ぶっ飛んだ感じとかを音にすればただいいだけっていう状況をモリさんが与えてくれた。
『曲書かせてください』、『いいよ』って言われた時点で、好き勝手やってもいいっていう」

ー田中さんが思う存分にやってらっしゃるのは、音楽を聴いていてすごく感じました。それからこのアートブックは対談を読んでいくと、田中さんもモリさんもお互いに「そうだったんですね」っていうやりとりが何度かありますよね。

田中さん「絵の説明を受けて作っては一切なくて、もう勝手に作りましたから。だからかなり食い違ってたところもあったりして。だけど、それはそれで面白いかな、って」

ーはい、ほんとに面白く読めました。そしてまた次の質問に移りたいんですが、僕は田中さんのTwitterをたまに拝見するんですけども、いつだったか…何かの制作かレコーディングが終わられた段階だったと思うんですけど、「俺の遊びを手伝ってくれてありがとう」っていう言葉が書かれていたのが印象的でした。
田中さんにとって、誰かとコラボをしたり音楽を作る際に、クリエイティブな意味で「遊ぶ」っていうことはやはり強い意味合いがあるんでしょうか?

田中さん「遊ばなかったら面白いものは作れないんで。———自分も遊ぶけど、相手も遊んでくれないと———っていうのはある。
だからまずこの絵をその人たちに見せる、「面白いでしょ?」って。この絵に引っかからない人は、一緒に作っても絶対“お仕事的”になっちゃうわけだから。だからまず、この絵を一緒に組みたい人たちに送って、それで、全員引っかかってくれた(笑)」

ーなるほど、全てはこの絵につまっているんですね。そして“遊べる”仲間を探していったと。

田中さん「そうです。だからミュージシャンも豪華です」

■1番のテーマは、「好き勝手やれよ」ってことなんです

ーここから少し、アートブックの中を見ながらお話をしたいです…(と、ページをめくる。9曲目『Blue dream』のページをひらき)…僕は、この絵と曲と、さらに対談を読んで、ランボーの詩がやっと理解できたんです。
「また見つかった、何が、永遠が、海と溶け合う太陽が」という有名な詩で、一瞬の中に永遠を見つける、っていうすごい詩なんですけど、このページで語られていることで“やっとわかった”という喜びがありました。

田中さん「それが今僕が考えてることなんですよ。そういう要素が全部合わさった時、その正体が見えて、より没入していくっていう。今“イマーシブ(没入感)”っていう言葉が流行ってるかもしれないけども、仮想現実の中に入り込むのって音楽だけじゃ難しくて、映像とか色んなものが合わさった時に没入度が高まってきて、エンターテイメントとして楽しめるっていう方向が今は必要———音楽にとっても必要だし、アートにとっても必要なのかなと」

ーそういったいろんな試み・試行錯誤があって、昨年末はガラスのピラミッドでのライブステージにまで結びついたんですね。アートブック制作からライブステージへ、という流れの中で、今はどんな手応えを感じていらっしゃいますか?

田中さん「まずここ3年で、人間としての“繋がり”でものが作れるようになった。お仕事で依頼しますとかそういうことじゃなくて、「これ好きだから一緒に作りましょう」っていう環境ができてきて、それが広がってきてる。
自分たちは今、Nuvellrandという道内各地の大学生のクリエイティブチームとの制作にも取り組んでいるのですが、きっかけは彼らがうちで制作した音楽を聴いて”一緒になにかできないか”ということで自分たちの作った音楽とビデオを送ってくれたことでした。
年代も地域も関係なくネットを通じてクリエイティブに簡単に繋がれる。会社やレーベルに所属ということとは違う、それぞれのやりたいことの方向で繋がりあえる。これぞ音楽、アートの世界だなと」

ーすごいですね。今は、やりたい人・繋がりたい人はどんどん自分から枝を伸ばして何かが生まれていくんですね。

田中さん「そうですね。つながった時に何ができるか———、自分が何できるかじゃなくて、この人と一緒だったら何できるか? っていう発想に変わっていく。
実は、今度は〈教育〉っていう方向も入れていきたいなと思っています。というのは、最高のプレーヤーとか最高の絵を描く人たちが存在している———、じゃあそれがどういう意図で描かれているのか、というのをデータ化していくと、そこで教育素材ができるんじゃないかな、っていうのがあって」

ーそれこそ〈Melody in the eyes〉の対談を読むと、作品の制作過程に触れる事での学びがあります。しかもそれは、押し付けられる学びじゃなくて、自分から“もっと知識をくれ”って欲してしまうような学びです。

田中さん「一番のテーマは、『好き勝手やれよ』っていうことなんです。やりたいことやれよ、っていう。モリさんはまさにそう」

ー田中さんが考えられている活動の、この先の発展もすごく楽しみです。たくさんの素敵なお話をありがとうございました。

■こういう曲を作ったのは初めてなんです

―ではここからは、〈LOMP〉の話に移りたいと思います。まずは僕の感想から失礼します。

今作は、札幌を拠点に活動するイラストレーター・シンヤチサトさんと、下川佳代さんのソロプロジェクトtuLaLaによる”音楽絵本”。物語はVivi D(ヴィヴィディー)さん。
“飛び出す絵本”となっている今作は、子どもの頃、あたらしい絵本を手に取った時のわくわくする気持ちを思い出させてくれました。音楽・絵・物語・歌が円環をつくるように関わり合っていて、どこから始まったのかまったく想像できないほど。モエレ沼公園ガラスのピラミッドでの展示会では、タペストリーになったシンヤチサトさんのイラストが展示されており、タペストリーの“重なり合い”の中を歩いていくと、飛び出す絵本の中に自分が迷い込んでいく感覚を味わうことができました。
また、ごく個人的な感じ方を言えば、この絵本からは願いや祈りをすごく受け取りました。それはもしかしたら、親が子どもに夜、読み聞かせをする時の感情に近いかもしれません。例えば、いい夢をみられますように、という願い、目覚めた時に世界がよりよくありますように、という祈り———。絵や音楽は優しいけれど、Vivi Dさんの言葉は世界の暗い部分にもしっかり向けれられていて、だからこそ絵本の中で繰り返される「ギフト」、という言葉があたたかく響きます。
また、僕がライターだからか、この絵本では音と言葉の“関わり”に強く惹きつけられました。特に、12月10日ガラスのピラミッドのステージでは、Chimaさんが絵本の朗読も披露されていました。朗読って普段あまりライブで体験する機会がないので新鮮で、そして同時に、歌う人の朗読って心地いいなとも思いました。言葉そのものの音とかリズムを信じている感じがして、すごくそのままストンと入ってくる感じがしたんです。
仕掛けがいっぱいな音楽絵本LOMPですが、ぼくはその仕掛けをすべて見つけられていない気がしています。ですが、この絵本の良さは「LOMPとは何か」、その答えが読み手に委ねられている部分だと思いますので、正解を聞きたい気持ちをグッと堪え、制作過程のお話を、インタビューさせていただきたいと思います。

下川さん「素敵な感想をありがとうございます」

ー最初の質問なんですが、事前にいただいた資料にもあったんですけども、絵本の構想のスタートはシンヤさんがずっと抱かれていた主人公のキャラクターで、それを下川さんに持ちかけた…という経緯だったんですよね。あらめて、その時の事っていうのは覚えていらっしゃいますか?

下川さん「もともとはもう20年くらい前なんですけど、その時に私、〈Moi(モイ)〉という音楽とアートのイベントを企画していたんです。当時若手のアーティストやクリエイターを目指す人たちの作品のなかでライブをする、っていう事を色んな場所でやってたんですよ。
その時はじめてシンヤさんと出会って、シンヤさんの絵が大好きになって、その頃私がプロデュースしてたアーティストのジャケットのイラストをお願いしたり、自分のtuLaLaのアルバムの時にもシンヤさんにアートをやってもらって———。たぶんその時ぐらいに、このLOMPの絵を見てたんですよ。『こういうキャラクターがいるんだよね』って。

だからだいたいその辺りの時、2018年あたりでシンヤさんが『自分の夢なんだけど、実は絵本を作りたいんだよね』って。しかもこの飛び出すやつがすごい好きで、これを絶対にやりたい、っていう話をしてて、『そうなんだ! じゃあ絵を見せて』って言って絵を見せてもらったんです。そして、『これって絵本だけじゃなくて音も一緒に作ったらどうだろう?』って言ったら、『あ、いいね!』 みたいになって、それで『じゃあつくろうか!』 って」

ー僕は、tuLaLaの音楽はやはり原風景がある音だなと思っているんですけど、表現する上でのヴィジョンやイメージの部分でシンヤさんと共通している部分とか、通じ合っている部分っていうのはどういうところだと思いますか?

下川さん「シンヤさんの絵って、すごくドリーミーというか、夢を見させてくれるような絵だと思うんです。すごく原色が効くというか———真っ赤だったり真っ青だったり、彼女の絵っていつも原色がバーン!と入ってくるんですよね。でもそれが毒々しいって感じじゃなくて、絶妙なバランスで飛び込んでくる。その幻想感と原色っていうのが、とても刺激されるというか。
私の作る曲も、そうしようと思って作ってるわけじゃないんですけど、どこかに狂気みたいなものとか毒気みたいなものとかはすごく入れたいというか、入れてしまうんですよ。そこと共通しているというか…毒ではないんですけど、こういう原色感がすごく好きで、通じる部分があるなっていうのは思いました」

ー僕は、絵本の世界観から冬っぽいイメージも感じてしまいます。それは自然とそうなっていったんでしょうか。

下川さん「今回は自然でしたね。アルバムの1曲目は、ちょっと宇宙っぽいアプローチで壮大な感じになっちゃったんです。あと〈エクリプスの解〉っていうちょっとダークな曲があるんですけど、それも『絵本には合わないだろう』と思いながら聴いてもらったら、『まさにぴったりだ!』って返事がきて(笑)
Vivi Dさんのストーリーもそうなんですけど、地底の国、っていうのがテーマだったんですよ。闇の、もっと暗い地底のところに光が射すっていうイメージだったり、時空の中にひとりで佇んでるとか、そういう表現もあったりして。
私は“楽しいけど、どこか孤独”みたいなのを感じていて、それでああいう曲ができたんですけど、でもピッタリだって言ってくれてたから、そこは共有できたのかな。曲も相談したわけではぜんぜんないんですけど、不思議とイメージが合ったっていうか。曲のイメージと、物語の抽象感、それが合ったのかなっていうのは思いました」

ー今作は作品の一体感がすごいと思うんです。複数のクリエイターが関わっている絵本で、完成に至るまでにもちろん順番はあったはずなんですけど、全部一緒に生まれてきたみたいな形になっている。

下川さん「そうですね、不思議とそうなりました」

ー歌詞ができたのはどういうタイミングだったんですか?

下川さん「〈Fantasy〉はカメレオンレーベル作品の英詞でサポートしてくれているカナダ出身のIsisが担当しました。タイトル曲の〈LOMP〉はVivi Dさんが歌詞を書いてくれました。
そうですね…曲ができた時は私が仮歌を歌ってたんですよ。その時に、柱になる言葉は私「ロー エンド ロー(Low and low)」って自分で歌ってたんです。あんまり物語の内容を知らない時にそう歌ってたんですよ。 そしてVivi Dさんに聴いてもらったらVivi Dさんが「これ私書きたい!」って言ってくれて。

ーきっと何か触発したんでしょうね。

下川さん「そうなんですよ。で、Vivi Dさんはけっこう一気に書いてくれたんです。その詩が素晴らしく良くって。それから、〈Fantasy〉は、もともとインストだったんですよ」

ーあっ、そうなんですか!

下川さん「まずChimaちゃんに、〈LOMP(曲)〉を歌ってもらったんです。そしたら、やっぱりとんでもなく良くて。想像を超える———曲に命が吹き込まれた感じになって。それで、「〈Fantasy〉もインストなんだけど、言葉を入れたらどうなるのか歌ってみよう」と思って、自分で1回歌ってChimaちゃんに渡して、Isisに歌詞を書いてもらったのが、〈Fantasy〉に繋がったんです」

ー〈Fantasy〉は、僕は言葉の歌い回しがすごく好きで。歌い上げるというよりは、言葉や意味をひとつひとつ置いていくような歌で、それが朗読っぽさもあり、絵本という世界観で考えた時にすごくストンと胸に落ちるというか、好きな表現だなと思ったんです。
だからこの曲も、「どこから作り始めたんだろう?」と気になっていました。歌詞から始まったのか…音楽から始まったのか…絵から始まったのか…。でも今お聞きした感じだと、先に歌があって、その次に言葉がやってきた、っていう感じなんですね。

下川さん「この〈Fantasy〉って、実は四小節のメロディーをずっと繰り返してるだけなんです。サビもなく、Bメロもなく、同じメロディを繰り返すだけにしたかったんですよ。だからさっきおっしゃったみたいな朗読を聴いているような感じとか、言葉がすごく入ってくるっていうのは、そこらへんにも理由があるのかもしれないです。
こういう曲を作ったのは初めてなんです。おんなじことを繰り返すっていう。永遠に繰り返したかった。これは歌詞の、『終わらない歌を歌う』っていう歌詞にも引っかかってるっていうか、それをずっと口ずさんでいるようなテーマでこの曲は作って、それからあとで歌詞をのせたんですけど、不思議と合ったんですよこれも」

ーすごいですね。

下川さん「不思議ですよね、ほんとうに(笑)」

ーあと、モエレ沼公園のガラスのピラミッドのステージの時にはChimaさんの朗読もあったと思うんですが、あそこを演奏するにあたってはどういうやりとりをChimaさんとされたんでしょうか?

下川さん「もうおまかせというか———、曲のサイズ感的なものは決めてあって、読み方とかはなにも。Chimaちゃんだったら素敵に読んでくれるであろうってわかっていたので、ほとんどもう、おまかせですね」

ーすごく中毒性のある、またあの場に行きたいなと思うような朗読だったので、機会があれば聞きに行きたいです。

■この人だったら絶対できるだろうって信頼で成り立っていた

―絵本制作から始まったクリエイションの流れっていうのは、今後どんな風に広がっていきそうですか?

下川さん「そうですね、まず…Chimaちゃんとのユニット〈Socca〉がこの延長線上で今動いているのが、今後の楽しみです」

ーすごく楽しみです。

下川さん「これは今後の課題でもあるんですけど、今回は書籍とCDの形にしたんですけど、もっと広げられる方法があるんじゃないかなって思いました。もっと広げたいな、って」

ー今はそれを探されているんですね。

下川さん「そうです、探してます。この絵本も、子どもたちというより、むしろ大人の人の想像力とか夢見る心みたいなのをテーマに作ってたんですけど、”届け方”みたなのは今後考えたいなと思いましたね。
もっと仲間を増やしたり、アイデアとかをもらって、違う形に発展させたいなって」

ー僕も、いち音楽リスナーとして”受け取り方”の事を時々考えます。デジタルでの受け取り方プラス“何か”があると、音楽との関係性や喜びが強まるなと。
その喜びを感じられたのが、今回の〈Melody in the eyes〉と〈LOMP〉だったんです。今の世の中ってほんとに早く流れてしまう。でもその中で、何か立ち止まるような仕掛けがあるっていうのは、ほんとうにすごいことなんだ、っていう。

下川さん「まさにそうなんですよね、あえてこのアナログの書籍を選んで、余白がところどころにあったりとか、もっとアートを詰めたらいいんじゃない?っていうところもあるんですけど、あえてこうやって余白を作って、めくるっていう行為をしながら音楽を聴く。
余白って意味あるんじゃないかなっていうのは、作ってた時にシンヤさんとも話してたんです。だから私も、音楽でインストを多くしたのは、このページの余白みたいなのを皆さんに絵本と寄り添って聴いてもらうためにはどうしたらいいのかなと思って、それであえて短い曲を入れたりとか」

田中さん「(絵がないページを指して)この1ページの使い方、贅沢だよね(笑)」

下川さん「(笑)そうなんですよ、ここにほんとは絵をいれられるじゃないですか、でも『入れない』って言ったり」

ーあえて読むのに時間がかかるようなレイアウトにもなってますよね。

下川さん「そうですよね。これを手に取った人しか気づかないような発見とか、やっぱり意味あるよなと思いながら作ってました」

ー参加アーティストそれぞれの、絵だったり、音楽だったり、歌だったり、言葉だったり、各々の表現の分野から「絵本」という新しい分野に集結して、力を合わせてできた感じなんですね。

下川さん「そうです。シンヤさんが絵を書いて、Vivi Dさんが物語書いて、私が音楽作って、Chimaちゃんが歌ってくれて、Isisも詩を書いてくれて。5人が一堂に集まったことは一度もないわけで(笑) それぞれがほんとに分業、この人だったら絶対できるだろうって信頼で成り立っていたチームだったので、やっぱり『すごいな』って思いました。
それは、その人のスキルとか、やってきたものを見た上での信頼なんですけど、それでもこうやって作品が、それこそコロナの時代っていうのもやっぱりあったんですけど、それでも作品がひとつできたな、っていうのは手応えとしてありました」

ーお二人がこうして手応えを感じてらっしゃるっていうことは、周りの音楽シーンにとっても意味があることだと思います。この状況の中でも形にできたという事から、たくさん勇気をもらえるような気がしています。
ありがとうございました。これで各々の作品について深掘りするパートを終わりたいと思います。ほんとに深いお話がたくさん聞けて、そうだったんだ! って思いながらお話を聞いていました。

■一緒に何かをやったっていうのは重要ですよね

ー最後はやっぱりお二人から今後の活動というか、いま構想されていること・考えていることがあればおきかせください。

田中さん「具体的なものはけっこうあります。去年のコラボの延長線上でまた別の人と進めているもので2つ3つこれから発表していくのがあって、そして自分がメンバーのバンドYAYYAYも2ndアルバムを出します。
次に何をやるべきかって考えた時には、去年やってきたことがすごくヒントを与えてくれるというか…何故去年までの活動ができたかというと、人との繋がりが増えていろんなことができるようになってきたから。じゃあ次は誰が加わって何をやったら、どこまでふくらむんだろう?っていう。
とくに大学生の事に関しては、今までは手伝ってもらう、っていうところで去年はいろんなことをやってもらったんだけど、今度は逆に、彼らが作るものに俺たちが一生懸命手伝うってことをやらないと、広がっていかないと思っています。

今言いたいことのひとつは、それをもっといろんな人に、彼らを支援するような、あるいはそのチームがもっと広がるような、北海道にはこれだけ学校があるんだから、それが繋がって何かできたら面白いねみたいなこと。
そのくらいやっぱ若い子達ってすごい。敵わないことがたくさんあるから、そこはほんとに悔しいくらい。もし自分が今この時代に10代・20代だったらまだまだ面白い事ができたんだろうなっていう気がしちゃうんで、そこがやっぱり羨ましいし、羨ましいからどんどんやれる環境ができたらいいなと思う。どっかの企業の人たちが、この子たち面白いなって支援してくれるような環境ができたらいいなって」

ーすごくいいです。ひとつのシーンをつくる、ということをやろうとしてらっしゃるんですね。

田中さん「才能ある人だらけなんでね。そこがもったいないなと。今作ってる人たちはいろんな勉強をしなくちゃならない。どうやって資金を集めるとか、どうやって支援を受けるかとか、そういうことを研究して、利用して、どうやって作るかっていうところまでやらないとものを作れないなって」

ークリエイティブな枠組みみたいなことにも取り組まれながら、次へ向けて動かれていると。

田中さん「俺たちって、そういうことに興味持たないでずっとやってきたんですよ。だけどこれだけ(コロナで)困ったら、何かを自分たちで作らなければならない。人からオーダーを待っていても作れないわけで」

ーそれこそ、ガラスのピラミッドでのライブステージの最後、アンコールでの、Salyuさんやカルテットの皆さん総出でのセッションは、すごい贅沢な、一種の“神々の遊び”みたいな空間だったと思っています。
いろんな試行錯誤があって、でも最終的にああいうクリエイティブな一瞬に結びついていくっていうのは、すごいディレクションですよね。最後のアンコールのセッションはほんとうに、あの場にいれてよかったと思っています。

下川さん「うれしい」

ー以前、お二人にはメールでお伝えしましたが、「森の中にいるようだった」って僕は感じたんです。それはどういう意味かというと———、森って、鳥とか風とか、いろんな音が聞こえるけど別に合奏をしてるわけじゃないですよね。けど、その場に足を踏み入れた時にいろんな音が合わさって美しく感じる。あの時のあのセッションもそんな感じがして、森のようだと思ったんです。

下川さん「よかった(笑顔)」

田中さん「あれはね、開催1週間前くらいにSalyuさんが一緒にやりましょうって言ってくれたんです。簡単なコード譜だけ全員に渡しておいて、前の日に一回合わせてみてあとはみんな『好きにやって』みたいな(笑)」

ーそれが本当に、美しかったです。

田中さん「一緒に何かをやったっていうのは重要ですよね。あれが別々の、対バンみたいに並んでたら見え方が違ってたと思うんだけど、最後に一緒にやった。Salyuさんもそれを考えてくれたんだろうし。その辺が、向こうから与えてくれるっていうのが嬉しいです」

ー下川さんはいかがですか。tuLaLaの今後について。

下川さん「まずは3月、4月とユニットSoccaの2ヶ月連続配信リリースをしてアルバムも準備中なので、まずはそこの制作と…並行して去年から続いているプロジェクトのアップグレードしたものを見せられる形にしたいなと思って、いまいろいろと画策中というか、模索中というか(笑)」

Socca 第1弾シングル「雪のあしおと」MV

下川さん「私も、去年からいろんなことをやっていてすごく変わってきたのは、今までは作ること・完成させることで満足もあったし、精一杯だったんですけど、徐々に見てくれた方とか来てくれた方のことをすごく考えるようになったんですよ。だから前は全然考えてなかったのかもしれない。自分のことで精一杯っていうか(笑)

ライブもそうで、最近はそこに来てくれた方とかに、“私は何か与えられたんだろうか?”っていうことを、すごく考え出したんです。ぜんぜんできてないんですけどね。一本一本、ライブをやるときも準備で追われて。モエレもそうだったんですけど」

ー膨大なやることが、きっとありますよね。

下川さん「アレンジして、譜面書いて…当日間に合うか!? ———みたいになって、来てくれた人と会話すらできないっていう。
これじゃいかんのではないか!? とすごく思っていて、だから今年のテーマは“余裕”というか、そこの目線をどうやって作ったらいいんだろうっていうのが、最大のテーマです」

ー来てくれた人との交流、ですよね。

下川さん「そうなんですよ。ライブも曲のことで精一杯で、どうやって楽しませたらいいんだろう?っていうことをこれからは“もっと”考えたいな、って思います」

ー今でも十分 、楽しみを受け取っているので、その先を考えられた時にどうなるんだろうと考えると、すごくワクワクします。

田中さん「その“余裕”は、自分の能力が高まってできる事もあるかもしれないけど、人(チーム)が全体で同じ意思で作るようになった時に、ある部分は他の人が一生懸命やってくれて———みたいな環境ができたら、皆がある程度の余裕の中でできるようになる。だからその環境がすごく大切だなと思っていて、さっき僕が言ったように、同じ志の人がどんどん増えてくれれば、っていうのがね」

下川さん「そうそう。今まではお仕事の依頼に対しての責任力とか、そういう部分での完成度に関してはできるかぎりのことはやってきたという段階だったんですけど、ソロのtuLaLaとしてのステージだったりコラボとしてのステージをやった時にも、どこか仕事でやっていたイメージを引きずっていて。

自分で思う完璧像みたいなものに絶対しなきゃいけないっていう…なんか、“納品しなきゃいけない”っていうのとおんなじような完璧像だったんですけど、コラボとかいろいろ重ねていくうちに、ここは自由でいいんじゃない? とか、人を信頼して余白を残して、そこはまかせちゃうっていう。
人の信頼の仕方をもっと変えなきゃいけないんだなっていうのを、気づき始めてて。だから次、もっといいライブをできる気がします(笑)」

ーめちゃくちゃ楽しみです。すでにたくさん実績があるお二人からこんなお話をきけると、また刺激を受けます。もっと僕も、やりたいという気持ちになりました。
こういう難しい状況の中で次へ進み、新しいものを生み出しているお二人へのインタビューは、色んな方に刺激を与えられるものになるだろうなっていう手応えを感じました。本日はありがとうございました。
〈All Photo by 繁野潤哉/取材・構成 竹田賢弘
撮影場所「喫茶とギャラリー なみなみ

■Information

Shizuka Kanata
YAYYAY

【田中一志さん】
作曲家、編曲家、プロデューサー、カメレオンレーベル代表 、sleepy.abなど多数のアーティストのプロデュース、制作を手掛けると ともに、2013年、田中一志の不特定多数によるミュージシャンとの Project “Shizuka kanata”名義でエレクトリックを核に繊細なスキルと型 破りなアイディアを集結させた初のソロ作品「Snow」, 「Divine Hokkaido」2枚を発表しアーティスト活動をスタート。
2020年にはユ ウ(Vo,G,チリヌルヲワカ、ex GOGO!7188)、須原杏(Violin)、林田順平(Cello)とバンドYAYYAYを結成し1stアルバムを発表。気鋭のアート クリエーターやミュージシャンとのコラボレーションから生まれた作品 を発表している。
田中一志としては CM、イベント、舞台音楽など様々 な制作を並行して行っている。最新情報はShizuka Kanataオフィシャルサイトをチェック。レーベルの情報はこちらからもどうぞ。

tuLaLa
Socca

【下川佳代さん】
作曲家・編曲家・プロデューサー。ピアノを中心とした幻想的で美しいアンビエントな世界とグリッチ音、ノイズ、エレクトリックと複雑に絡み合い映像的でファンタジーな世界を表現している。
2018 年、ソロプロジェクトtuLaLaの1st ミニアルバム”shizuku” をリリース。収録曲がAC ジャパンのTVCM へ起用。2019 年、渋谷www にてROTH BART BARON と弦楽四重奏を加えたイベ ントを主催。
下川佳代名義では声優アーティストへの楽曲提供、編曲、プロデュースやTVアニ メ、映画、舞台、CMなど多方面での音楽制作を手掛ける。またSpotifyではPodcast『Eccentric Daze』にて感度の高い選曲とトークを発信。2022年からは、シンガーソングライターのChimaと結成したユニットSocca(そっか)の活動をスタート。最新情報は公式HPをチェック。

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